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「納棺夫日記」と宮沢賢治 [本(その他)]

映画おくりびとの感想をこちらに書いてから、「納棺夫日記」についても・・・と思いつつ
なかなか書けないままに、また1カ月が過ぎてしまいました。
でも、まぁこんなことは、今に始まったことではないんですけど。。

「納棺夫日記」は「おくりびと」の元になった作品なのですが、著者の青木氏が
自分の宗教観が反映されていないからなどの理由で、自分の作品とは別物として扱ってほしい
と希望されたということは、有名な話です。
実際作品を読んでみると、「納棺夫日記」の前半部分には「納棺夫」となった経緯や体験、
そのことに関する思いなどが描かれています。
しかしその半分以上を占めているのは、多くの宗教書からの引用文や青木氏自身の「生や死」に対する考え方について書かれたものでした。
その中には、あちこちでよく目にする本のタイトル、宗教家や作家の名前など、実にたくさん。
親鸞、釈迦、蓮如、道元、イエス、キュープラー・ロス、ゲーテ、宮沢賢治、金子みすず、「星の王子様」や「般若心経」、あるいは科学やアニミズムについてまで。
中でも、その中心となっているのは、主に親鸞の思想なのではないかと思えました。
親鸞の「教行信証」や「歎異抄」などから引用をしながら、特に青木氏がこだわったのは、不思議な「ひかり」のことでした。
親鸞が不可思議光と名付けたこの「ひかり」は、日常我々が見ることはできないのだという。
では、どういうときに出会うことができるのだろうか。
青木氏は、「人が死を受け入れようとした瞬間に、なにか不思議な変化が生じるのかもしれない」と言いつつ、そんな瞬間に、あの「ひかり」に出会うのではないだろうか、と語ってみえます。
私自身は、そのような自覚できるような経験はないので、その「ひかり」がどのようなものであるのか、はっきりとはわかりません。
でも、晴香とともに、長い間病院暮らしをした後にみた、山や木々の緑、桜の花が、それまでになく
美しく輝いてみえたのは、青木氏が言われる「世界が輝いてみえた」ことに、ほんの少しかもしれないけど通じるものがあるのかも・・・と思いめぐらすこともありました。
一方で、ただ単に、解放感によるものかもしれない、とも思えてきたり・・・で、やっぱりよくわからない、というのがほんとうのところです。

この作品の中に書かれている作家や引用文には興味深いものがたくさんあり、
中でも、宮沢賢治について書かれた部分には、とても興味を惹かれました。
最愛の妹「とし子」の死に臨んで書かれた「永訣の朝」を読み
妹「とし子」の死が、賢治にいかに大きな影響を与えたのか、初めて知ることができました。
実は、私が小学生のころ、宮沢賢治の童話集を何冊か読んでいたのですが
このような詩を書いていたことは、今まで知りませんでした。
たくさん童話を読んでいたものの、まだ幼かったせいもあったのか
宮沢賢治の作品の多くが、宗教的なテーマで書かれたものであるということには
ほとんど気がついていなかったようです。
晴香を亡くした後しばらくして、下の娘に「銀河鉄道の夜」の絵本を読み聞かせていたのですが
その時にも、この作品のことをあまり理解できていなかったように思います。
特に布団の中で眠い目をこすりながら読んでいたこともあって、内容の理解には程遠かったようです。
今回、この「納棺夫日記」の中で、「銀河鉄道の夜」の主人公ジョバンニは、”賢治の分身”と書かれているところをみて
「あっ、そうだったのか!」
と初めて、この作品に込められた深い意味に気付いたのです。
それから、カンパネルラが、亡き妹「とし子」の分身だということに気付き、
さらには、ジョバンニの語る言葉に込められた意味は?乗客の言葉は?
いろいろ出てくる宗教的な表現に込められた賢治の思いとは?
などなど、さらにいろいろ知りたくなってきて、ネットであれこれ調べるうちに、
詳しく書かれたサイトをみつけました。
賢治の見た夢~銀河鉄道の夜→http://contest.thinkquest.jp/tqj2002/50133/

「銀河鉄道の夜」も宮沢賢治も、実に深い。
今まで、賢治の作品を読んでいながら、どこまで理解していたのだろうか。
これは、もう一度読みなおさなければ・・・
ということで、宮沢賢治の作品や、宮沢賢治について書かれた本など数冊、
図書館で借りてきました。
昔読んだ短編童話のあれこれが、まるで違ったものに思えてきます。
そうそう、宮沢賢治とともに、親鸞の「歎異抄」について書かれた本も同時に読んでいます。
「歎異抄」は「納棺夫日記」の中でも触れられていたものです。

この本から始まって、「飛鳥へそしてまだ見ぬ子へ」それからキリスト教へ。
「銀河鉄道の夜」から宮沢賢治へ。
「納棺夫日記」から、いろいろなところへと広がっていきました。この本を読んでよかった。。

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