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「犠牲サクリファイス~わが息子・脳死の11日」 [柳田邦男]

少し前に、柳田邦男氏の「いのち~8人の医師との対話」についての感想を書きましたが
この本を読んでから、これはぜひ柳田氏の「犠牲サクリファイス~わが息子・脳死の11日」も
読まなくてはと思っていました。
8月に入ってから、再び立ち寄ったブックオフで、この本を発見。
以前は気がつかなかったのだけど・・・・2冊も置いてありました。
迷うことなく購入して読み始めたところ、もうどんどん引き込まれてしまって
ここのところには珍しく、ふた晩ほどで読み終えてしまいました。

柳田氏の次男、洋二郎さんは、中学生の時から心の病に苦しみ
25歳のある日、自分の首にコードを巻きつけ、自死をはかってしまいました。
一命をとりとめたものの、その後脳死状態に陥り
11日後にとうとう亡くなってしまいました。
この本には、洋二郎さん自身が書いた短編の物語とか
心の中の葛藤を書き表わした日記などが、思いのほかたくさん載せられています。
また、洋二郎さんが心の病をかかえながら苦悩する傍らで
なんとか彼をささえようとしたのだけれど、結局自死という形で
息子を失うことになってしまった父の苦悩や、
さらには、脳死状態でありながら身体で反応をしてくれる息子に寄り添ううちに
脳死は人の死と一律に決められるものではないと、それまでの著者の考えがかわっていく過程、
最終的には、人の役に立つことをしたいと骨髄移植登録をしていた息子の遺志をかなえるために
腎臓移植を決意することなど、
一冊の中に、実にいろいろなことがずっしりと書かれています。

洋二郎さんの日記には、彼の苦悩が切々と書き込まれています。
実に繊細で純粋な魂の持主であった洋二郎さん、繊細すぎるがゆえにこの世界に適応し
生き続けることができなかったのでしょうか。
日記の文章を読んで、彼の葛藤が、自分の心の中にもどんどん入り込んできて
激しく心を動かされました。
そして、読んでいる間に言い表しようのない切ないおもいが溜まっていったのでしょうか
最後に、表紙カバーを外して、本体表紙にびっしりと載せられている洋二郎さんの日記を見たとたん、
涙がどっと溢れてしまいました。

以前、「いのち・・・」のことを書いた中で、柳田氏の臓器移植改正法案に対する意見について
書いているので、ここでは特にそのことについて詳しくは書きませんが、
ただ、今回「犠牲・・」を読んだ中で印象的だったことについて、1つだけふれてみたいと思います。

それは、「死」というのを「点」でとらえるのではなく「面」でとらえるということ。
人はだんだんと死んでいくものだということ。
特に脳死状態のような場合、どの段階で死を選択するかについては、幅をもたせるべきだということ。

だんだんと死んでいく中で、家族もその死を徐々に受け入れらるようになっていくものであるし
そのどこかの段階で臓器移植を決断するということもあるかもしれない。
死は、急がされるものであってはならない。。


「生」と「死」に関して、多くのドキュメンタリー作品を書いてこられた柳田邦男氏。
自身のこの辛い経験を書くことには、親族の反対や、自身の葛藤もあったことでしょう。
それを乗り越えて書かれたこの本には、大きな意義があると思います。
臓器移植問題などに関しての提言には、多くの人の共感を呼び起こしました。
また、洋二郎さんと同じような心の病に苦しむ人たちや、
子どもを亡くした人、あるいは自死によって愛する人を亡くした人たちにも
たくさんの感動を与えたことが、出版後に届けられた膨大な量の手紙からも推測されます。

その多くの手紙をもとにかかれた「犠牲からの手紙」について。
感想を、次にまた書いてみようと思います。
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