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あと数か月の日々を~物理学者・戸塚洋二 [科学・宗教]

先日(14日)NHKで戸塚洋二さんのドキュメンタリーが放送されていました。
なかなかよい番組で、何気なく見始めたわりには、最後まで目が釘付けになってしまいました。
昨年大腸癌でなくなった素粒子物理学者・戸塚洋二さん。
死の直前まで自らの癌を客観的に分析し、ブログに綴り続けてみえました。

番組紹介より
「謎の素粒子ニュートリノを研究し、物理学の常識を覆した戸塚洋二さん。その成果から、小柴昌俊博士に続きノーベル賞を受賞すると言われながら、2008年にがんで亡くなった。実験を通して生涯、宇宙の生と死に向き合った戸塚さんは、がんに侵された晩年、自らの病にも科学の目で向き合った。がん専門医も驚く病状の分析、近づく死への恐れなどをインターネット上のブログにつづっていた。がんを見つめた科学者の日々を追う。」


番組は、戸塚さんが綴っておられたブログの内容を中心に進められていました。
科学者らしく、自身の病気についても綿密に綴られており
転移した脳のCT画像を入手し、データ化したり分析したり。
その内容には医者も驚くほどだったという。
緻密に綴ることで、死の恐怖を克服しようとしていたのではないかと奥さんが語る。
ブログはさらに、病気についてのみならず、病気の進行にともなう心境の変化や
研究の内容、さらには奥さんの育てられている花々のことにも触れられている。
その中には、科学と宇宙、生と死が混在する不思議な世界が描かれていました。

番組のなかで、印象に残った言葉。
仏教を科学的に説かれている佐々木閑さんとの対話の中で、戸塚さんが語られた言葉より

『別の世界があるのかどうか死ぬ時それを確認できる。しかし、それを伝える方法がないのは科学者として残念なことだ。』

死への恐怖を克服する方法を尋ねられた戸塚さんが、ブログの中で答えられた言葉より。

『よく人はしたり顔に、「残り少ない人生、日一日を充実して過ごすように」と、すぐできるようなことを言います。私のような平凡な人間にこのアドバイスを実行することは不可能です。「恐れ」の考えを避けるため、できる限りスムーズに時間が過ぎるよう普通の生活を送る努力をするくらいでしょうか。
 「努力」とつい書いてしまいました。ここにある私の「努力」は、見る、読む、聞く、書くに今までよりももう少し注意を注ぐ、見るときはちょっと凝視する、読むときは少し遅く読む、聞くときはもう少し注意を向ける、書くときはよい文章になるように、と言う意味です。これで案外時間がつぶれ、「恐れ」を排除することができます。この習慣ができると、時間を過ごすことにかなり充実感を覚えることができます。』

ブログには、戸塚さんが取り組んでいたニュートリノについても書かれています。
ニュートリノってよく耳にしていたけど、いったいどういうものなのか
この番組をみるまではまるでわかりませんでした。
小柴さんがノーベル賞をとられ、その研究施設であるスーパーカミオカンデは
地元岐阜県神岡にあるのだということはわかっていたのだけど
それが、いかにすごいものであったのか、この番組を見て
さらには、戸塚さんのブログをみて、少しわかったようにおもえました。

戸塚さんたちの研究チームは、それまではニュートリノには重力がないと考えられていたことを
覆す研究成果を発表したのだという。
それによると、宇宙はいずれ縮小をはじめ、最後には無になってしまうことが予想されるのだという。
戸塚さんのブログには、ニュートリノのことについて、素人にもわかりやすく説明がされています。
番組をみたあと、さっそくブログに訪問して、科学入門の項目をじっくりと読んでみました。
学生時代からもっとも物理を苦手としていた自分が、どうして興味をもったのか。
実はこのところ、量子力学とか素粒子論とか言われる最新の物理学が妙に気になってるんです。
なぜなのか、それを書きだすと長くなりそうなので、ここでは触れないでおきますが。
いつか機会があったら、このことについてもあらためて書いてみたいと思います。  

ブログのコメントの中に、池田晶子という文字を発見。
池田さんと戸塚さんとを繋ぐものは何だったのか。
コメントを確認してみると、「2001年哲学の旅」のなかで
お二人は対談をされていたという。
この本はまだ読んでなかったので、意外なところで思わぬ繋がりがあるのだなと感心してみたり。
このときの対談で、池田さんは戸塚さんに
「自分が生きていることの不思議をどう思うか」
と質問をされたのだが、戸塚さんは
「それはあなたたちの領域でしょう。私はそういうことは考えません。」
というようにあっさりと答えられたという。
物理学が解明しようとする宇宙の法則は、個人の生死の意味といったこととは
まったく別個のことなんですよ、ということだったのでしょうか。
これは、戸塚さんがまだお元気だったころのことなのか
もし、病気になられた後、このようなブログを綴られるようになってからだったら
どのように答えられたのだろうか。

戸塚さんのブログ、内容も多岐にわたり、量もかなり
科学、宗教、生と死、自然、宇宙・・
どれもが興味をそそられる内容。
まだ読ませていただいたのは一部なので、これから何度か訪問させていただくことにしましょう。

戸塚さんのブログ→A few more months
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あきおパパ

はるママさん、こんばんは♪

戸塚先生の研究は、以前からとても興味がありました。
昨年末、先生のブログを元に、「戸塚教授の科学入門」という本が
出版され、その時に私も読みました。
「ニュートリノは静電的な相互作用をしないため、通常の物質と殆ど
相互作用しないので、地球なんかスカスカ」という話にすごく納得しました。
ブログの量が膨大でしたら、この本を読まれた方がよいかも知れません。

さて、先生の本やブログ、はるママさんのコメントを読んで感じたのは、
先生は、ご自身の死を受け入れられなかったのでは、ということです。
「死の恐怖」に対する先生のコメントは、死を乗り越え、死を受け入れる
ことができなかったことを示しているように思えます。

先生にとって、ご自身のされた仕事、やり残した仕事が、大きすぎたのでしょう。
「自分はとるに足らない存在である」と判れば、もうすこし楽になれたのに。
それがわかれば、池田さんとの対話も、もうすこし噛み合ったでしょうに。

偉そうなことを言う私も、自分の時に、そう思えるか自身はありません。
でも、もしそう思えるとしたら、
池田さんの最期の1年間のように、穏やかな心で過ごせるかも知れません。

ではまた♪
by あきおパパ (2009-07-19 23:59) 

はるママ

あきおパパさん、こんにちは!

戸塚先生のブログには、仏教を科学的に説かれている佐々木閑さんの著書からの引用が多くされています。
仏教と科学の融合・・
なんとなく興味をかき立てらる内容。

戸塚先生自身も、池田さんとの対話の中では、述べられなかったことを
ブログのなかで書いていらっしゃるのかも・・など期待しながら
読ませていただいたのですが(まだすべてを読んだわけではないですが、ここまで読んだ中で感じたことでは・・)
あきおパパさんがおっしゃられているように
戸塚先生は、やはり最後まで科学者として貫き通されたのかなという印象をもちました。

>先生にとって、ご自身のされた仕事、やり残した仕事が、大きすぎたのでしょう。

戸塚先生の亡くなられた翌年に、ニュートリノの生成実験が行われたそうですね。
やはり偉大な研究をされ、その研究半ばであったこと
などまだまだこの世でなされたいことがたくさんあったということなのでしょう。


あきおパパさん、さすが科学がご専門だけあって、もうすでに戸塚先生の本、読んでいらっしゃったのですね。

>「ニュートリノは静電的な相互作用をしないため、通常の物質と殆ど
相互作用しないので、地球なんかスカスカ」

科学入門の中で、この部分が一番おもしろかったです。
というか、最初このページを読んで、おもしくてわかりやすい!
と喜んだのですが、あとからまだまだページがあるとわかり
他のページにも行ってみたのですが、なかなかこれが難しく(^^;)
特に、光のスペクトルとか振動数だとかの式などに至ってはもうわけわからないという感じです。
科学入門の本は、このブログをもとに書かれたということですが
これよりはやさしくなっているのでしょうか。
それならばいいかもしれませんが、もしこれ以上の難しさだったら
とても私には無理のようです。
物理を理解できる頭がほしいです。。(苦笑)
by はるママ (2009-07-21 23:18) 

gueroguero

初めまして、突然の書き込み失礼いたします。
戸塚洋二さんのお弟子さんの梶田さんが、
ノーベル賞を受賞されましたね。
私も大腸癌になった時に戸塚洋二さんを知り、
亡くなってしまった事が残念でならなかっただけに
今回の受賞は嬉しいです。
by gueroguero (2015-10-06 22:15) 

はるママ

guerogueroさん
ご訪問、コメントありがとうございます。
戸塚さんが生きていらしたら共同受賞されていたのでしょう。
今朝のテレビでもそのように放送されていました。
亡くなられてしまったことはとても残念ですが、
お弟子さんが受賞されたこと、きっと喜んでいらっしゃるでしょうね。
戸塚さんのブログ、久しぶりに訪問してみましたが、
今は閉鎖されているようです。

by はるママ (2015-10-07 13:27) 

東海アトムパワー

戸塚先生の息子様 戸塚先生のブログを是非復活して下さい

by 東海アトムパワー (2015-10-17 15:06) 

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